20251104

冬が近づいてきたからか、左腕の前腕部が乾燥して粉吹きができた。触れると鳥肌が立ったときのような細かな凹凸があり、擦ると白い皮膚がポロポロと落ちる。今までも首や肘周りなどによくできていて、治ったり、ひどくなったりを繰り返している。以前、「病院に行った方がいい」と言われたので皮膚科に罹ろうと思ったが、行列ができているのを見て面倒くさくなり散歩するだけで帰った。それ以来、皮膚科に行くのは諦めた。

ふと、以前インターネットで知り合った人で、魚鱗癬という病気を患ってらっしゃる人がいて、その人のことを思い出した。その人と言葉を交わした回数はそう多くはなかったけれど、文章を読みあって、ぼんやりとお互いに親近感を共有していたと思う。何度か「とやま君はいい文章を書く」みたいに言ってくれた。僕もその人の書く文章が好きだった。

その人は、おそらく文章を書き始めると熱に浮かされたように一気に仕上げるタイプだったから筆が早く、文体を見ても、頭に渦巻いているものをスプーンでそのまま取り出してぶつけているみたいだった。僕が何を書いたらいいのか分からなくてぐるぐる悩んでいる間に、その人は数千から、一万字弱の文章を毎日投稿した。その中には、自身の魚鱗癬について書いた文章もあって、僕はそれをよく読んだ。

魚鱗癬とは、wikipediaによると「魚の鱗のように皮膚の表面が硬くなり、剥がれ落ちる病気」らしい。その人の文章で知って、YouTube で検索してみたりした。当事者でもない僕が言及するのもおこがましいので、直接触れることはしないけれど、それを見ていると僕の左腕にできている粉吹きなんか生ぬるいものだ。

その人が書いている魚鱗癬についての文章を読んでも、長い時間風呂で角化した皮膚を落とさなくちゃいけないのに、次の日にはまた角化した皮膚があって、みたいに書いてあったし、動かす度に痛みがあるみたいなことも書いてあった。記憶しているだけの内容だから間違っているかもしれないが、大まかには合っていると思う。

スマホで文章を読みながら、僕はそれをどんなものか想像してみた。でも、上手く想像することができなかった。

例えば、僕の現在の左腕の状況が、蛇が体を這い回るみたいにして全身に広がっていく様子を想像してみる。首から這い上がって、頬や、唇や、鼻先が、ひび割れていく。同様にして尻や、太ももや、つま先がひび割れていく。身体中がひびだらけになる。それはとても怖いことだと感じる。こういう想像をすることで、その人の感じていたものに近づけると一瞬思ったけれど、本質的にこの怖さは、その人が感じていた怖さとは違うはずだということ。

極論、どんな状況でも僕は誰かではないし、誰かは僕ではない。だから、僕は誰かになれないし、誰かは僕になれない。自分が見ている青と、隣の人が見ている青が、同じ「青」という言葉に括られてもそれが全く同じであるかは定かではない。僕たちは須く閉鎖系であるから、他人の痛みを想像するとはいったいどういうことなのか、考えれば考えるほどわからなくなる。

ここまで書いて、僕の左腕の乾燥から、魚鱗癬の知人を連想したことは、暴力的なことだと思った。それらは症状のレベルとして明らかに違うものだから。比較すること自体がおこがましいことだ。でも、そうならば、どうやって他人のことを想像することができるのだろう。適切な想像ってなんだろう。

その人とは、ここ数年は連絡を取ってないし、今は何をしてるかわからない。元気かな。